2015年11月18日

高山ワークショップ2015第3回

ものラボスタッフの矢田です。
今年も10月から始まっている高山ワークショップに関わるのも、これで2年目になります。
去る11月7日、2015年度高山ワークショップの第3回が開催されました。
今回は昨年度と異なり、第3回目からピタゴラ装置の製作を始めるプログラムになりました。
昨年よりも密度を濃くして提供していく形になります。

さて、例年ピタゴラ装置製作を始めるにあたっては、そもそもピタゴラとはどんなものかを簡単にスライド+動画で紹介しています。
本家ピタゴラスイッチの動画をお手本としつつ、ピタゴラを動かす原理となっている「エネルギー」を学びます。
本家ピタゴラスイッチにはかなり高度なテクニックも使われてはいるのですが、これから子供たちといっしょに作っていくにあたって着目するのは位置・運動・磁性・弾性の4種類のエネルギーです。

とくに基本となるのは「位置・運動エネルギー」で、この2種は不可分の関係にあります。
要は上から下へと落としていく、という動きです。
高いところから落とすほど強い運動エネルギーに変換され、球が速く運動する。
ピタゴラらしく程よいテンポで動かすためにはどんな傾斜がよいのか、あるいは次の仕掛けを動かすためにはどれくらいの速さでどんな質量の球がぶつかればよいかといったことが関わってきます。
しかしこれだけでは「ピタゴラ装置」にするにあたって単調なものになってしまうので、使い勝手のよい2つの工夫を導入します。
それが磁性・弾性エネルギー、すなわち磁石とバネ(ゴム)の持っているエネルギーです。
磁石で金属球を加速したり、金属片を持ち上げたりすること、あるいは伸ばしたゴムを重りで支えておき、何かの衝撃で重りを解放することなどの工夫が可能になります。
これによってひとひねり効いたピタゴラ装置になっていきます。
では磁石はつなげればつなげるほど磁力を増すのか、ゴムやバネは伸ばせば伸ばすほど弾性力を増すのか。
そうして蓄えた力は次の仕掛けを動かすに足るエネルギーなのかどうか。
そうしたことを今日、子供たちは肌身で手を動かしながら学んだことと思います。

こうした物理感覚は今、すごく養いにくくなってしまっています。
騒音や破損事故を恐れて遊びにくくなった公園、子供たちだけで外出させにくい治安などが前々から言われてきたことですが、近年はこれに「スマートフォンの普及」というものが加わり、劇的に子供を自然界から引き離している状況です。
極端な例を挙げますが、タブレットを触って遊んでいるアメリカの幼児が、ある日初めて紙の雑誌を手渡されたときに一生懸命「ピンチ(2本指を開く・閉じる)」していたのだそうです。
雑誌の写真がズームすることを期待したのでしょう。
もちろんこの子に継続的に紙の雑誌や本を与えていけば自然とタブレットと紙の違いは分かっていくでしょうが、あまり笑えない話です。
木はどれくらい硬いのか、この傾斜では球はどんな速度になるのか、セロテープは固定にどれくらい役に立ち、いつダメになってしまうのか。
そんな感覚を実際に経験する機会は実はいま日本の家庭で減ってきてしまっているのではないかということを危惧します。
この野性味じみた感覚ばっかりは、中学高校で物理や化学を机上にて習ったところで身につくことはありません。

彼ら子供たちは、映像や見本(事前にスタッフで作成)で見たピタゴラ装置を自分の手で作ってみると、全然その完成度には届かないことを知ったでしょう。
今日、子供たちは、僕たちが「微調整」と呼ぶその泥臭い作業を通じて柔軟に製作物を対応させていきました。
この過程は、きっといつか学校で習うであろう物理で無視されてしまう様々な力(摩擦とか空気抵抗とか湿度とかいったもの)の存在を当たり前に想起できるようになるために決して欠かせない経験だと僕は思っています。
そして学校で習った自然界の性質と、目の前の現象とがいつか机の上を飛び越えてリンクする日が来るでしょう。
今まだ習わない自然界の性質があることにも気づくことがあるでしょう。
ピタゴラ製作を「ミクロ」に見ていくと、そんな意義があります。

そして絶対に欠かせないもう一つの意義、ピタゴラ製作の「マクロ」な側面として、「協働」があります。
今年のワークショップ第3回では、ピタゴラ製作を始めるにあたって、6名一班の中でさらに「2人一組」になってもらいました。
その1組ごとに「ミニ装置」を作っていくのです。
今の時代は本当に便利になり、たった一人でもものづくりがしやすくなりました。
設計・デザイン・発注の全工程を簡単にする無料のツールなどいくらでもあります。
しかし、そんな時代においてたった一人ですごいものを作っている人はごく少数で、そしてたった一人ですごいものが作れる人でさえも、あえて一人ではものを作っていないことが多いです。
なぜならそれは、チームワークやコラボレーションによって「もっと良い」ものづくりが出来るからです。
クリエイティビティ、イノベーションの代名詞になりつつある「スティーブ・ジョブズ」は唯一のリーダーとして半ば強引にAppleを牽引していったかのように思われていますが、実際は彼のアイディアを形にする段階で、彼の配下にいた類い稀なる個性からなるチームの協働があってこそでした。
チームメンバーのそれぞれの才能と個性を活かしながらさらなる高みを目指すのが「ものづくり」の基本形と言って良いでしょう。
私たちはこの、誤解された個人主義の蔓延する今日の社会では見失われさえしてしまう「事実」を、たとえなんとなく、明示的にではなくとも分かってもらえたらと思いました。

そこで今日、第2回までの班を一新し、新しい班でものづくりを再スタートすることとなりました。
初めて話す人とも協働でものづくりをする、良い経験になったと思います。
もちろんこれがうまくいかず、製作が滞る可能性も心配していましたが、杞憂でした。
彼らは僕が「はい、製作スタートです!」と言った途端にペアで材料カゴのところまで駆けていき、ペアで協力してミニ装置の製作を始めたのです。
あーでもないこーでもないと二人で試行錯誤しながら、手を替え品を替えアイディアを形にしていっている様子は小気味よくさえありました。

さて、次回は各班で作ったミニ装置をつなげて、一つの大きな装置にしていきます。
二人1組のペアを超え、6人一班を意識することになるでしょう。
いまできている別々の装置のスタートとゴールをつなげるとき、お互いのアイディアの共有が必要になるからです。
ここでの協働をサポートし、促していくのが次なるスタッフの使命です。
そして第4回では、班員の個性や得意分野を理解しつつ協力してものづくりをしてもらうもう一つの仕掛けとして、「センサー」の組み込みが待っています。
マイコンを使った電子工作をピタゴラに組み込む実習です。
例年この実習は全員に体験してもらうのですが、こうした分野に高い関心を示す子と、そうでもない子がいます(ここは好き好きです)。
ちょうどセンサーっ子は班に1人二人くらいなので、その子にはセンサーを中心に考えてもらうことで、小さな分業が生まれます。
第3回で体験したのとはまた一味違った仕掛けが「乱入」することで、班員全員の想像力をかきたてる良い刺激になることが期待されます。

今年の子供たちも想像力豊かで、手がよく動いていて素晴らしかったです。
彼らのポテンシャルが一つの製作物として結実するのが楽しみでなりません。
引き続き、今年の高山ワークショップの動向をフォローしてくださいますよう、よろしくお願いします。
posted by ものラボ at 21:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 矢田 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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