2014年06月20日

「ことば」と「ものづくり」

こんにちは。宮田です。

先日6月14日に、東京事務所で、主に小学生の参加者を対象とした3Dものづくりワークショップを開催しました。

ワークショップの主なメニュー:
(1) 3D技術の説明
(2) 3D体験(モデルの取り出し、含浸作業)
(3) 東大キャンパスツアー
(4) 活動の振り返り

(1) 3D技術の説明
まずスタッフが、3Dモデル制作の流れや、3D技術が社会でどのように使われているかを簡単に紹介しました。医療現場を含め、3D技術は既に社会に浸透しつつあることが伝わったでしょうか。
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(2) 3D体験(モデルの取り出し、含浸作業)
そして、今回のワークショップのメインである3Dモデルの取り出し、含浸作業を行いました。3Dモデルは事前に作ってもらっており(iPad上で123D Creatureというフリーのソフトウェアを使ったみたいですね)、私たちが印刷をかけておいたので、取り出して粉を吹き飛ばす作業からはじめました。エアーガンで粉を払う作業は、気持ちが良いのか、かなり好評みたいでした(私も結構好きな作業です)。
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ブラシを使って、さらに丁寧に粉を落としていきます。
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粉をだいぶ落とせたら、次は含浸作業です。特製ボンドにモデルを浸して、表面を固めていきます。石膏とボンド(というより「水」でしょうか?)が化学反応を起こして、かなりの熱をおびることに、皆驚いていました。
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そして、ボンドを地道に拭きとって完成です。
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(3) 東大キャンパスツアー
なお、今回は参加者が多かったこともあり(最終的に26人と、ものラボ過去最高!?)、グループ分けをして、3D体験とキャンパスツアーを並行して進めました。ほとんどの参加者は東大にはじめて来たこともあり、しかも梅雨の晴れ間で絶好の散歩日和だったので、皆はしゃいでいました。
20140614-07.JPG
(あと関係ないですが、私は、小学生のデジカメやタブレット端末の保有率の高さに驚きました。)

(4) 活動の振り返り
最後は、ワークシートで、これまでの3Dものづくり活動の振り返りをしてもらいました。「びっくりした」「すごかった」「面白かった」等々、3D技術に対する驚きを率直に書いていた人が多かったです。あまり時間が取れなかったということもありますが、やはり、3D体験をことばにすることはまだ難しいみたいです。もう少し正確に言えば、「3D」ということば自体は、新聞・テレビで目にすることが一気に増え、情報としてはそれなりに分かっているにもかかわらず、やはり具体的動作としての3Dものづくりの実感をことばにするのは難しいみたいです。
また今回は書いている人はいませんでしたが「なんだか気持ち悪い」という、えも言われぬ違和感を持っている人はいると思います(私はいまだにそういう感覚を持っています。それこそ職人や製造業関係者は、3D技術に対して「こわい」「いやだ」というほとんど生理的に近い反発心を持っている人も少なくないんじゃないかと思います)。

この数年で3Dプリンターの「お試し期間」はだいぶ過ぎて、分野によっては欠かせない技術となりつつあります。また3Dプリンター等のハードウェアだけでなく、小学生でも扱えるような3Dソフトウェアも開発が進み、使える人の裾野が一気に広がっています。今後3D技術は、華々しくも実体の伴わない期待を押し付けられたまま社会に流れ込み、市民参加型の新しい産業形態を生み出しつつも、これまで人間が特権的に担っていた「ものづくり」の多くを飲み込んでいくことでしょう。これは不可避だと思います。

と、ここで思い出したのは、国立情報学研究所の新井紀子先生の『コンピュータが仕事を奪う』(日本経済新聞出版社、2010年)という本です(ちなみに、この本は「ものづくり」に関わる人にもオススメです)。ここでは、次のように指摘されています。

輸送手段が、船から鉄道に代わったとき、どんな職業がなくなり、どんなふうに人口が移動したか、覚えている人はもういません。当時、職業を奪われる人に対して「先を予想できない愚かな人だ」と嘲笑った人もいたことでしょう。けれども、人間にとって、技術がやってくる前に、技術がやってきた後のことを想像することはとても難しいことなのです。[中略]技術によって生活の場所を奪われて、初めて人々はその意味に気づくのです。(p.3)


今後数十年で、3D技術が人間のものづくりにどのような影響を与えるのかを完全に言い当てることは私にはできませんし、そもそもできる人はいません。しかし、上でも言ったように、確実に大きな変化が来るということは、ほとんど言い切ってもいいでしょう。そして、そのような状況を前にして、これまでの経験や知識の積み重ねを踏まえて、それなりの確度で「何が起こりうるか」を予測することは可能ですし、しなければならないと思います。と同時に、「では人間は何ができるのか(何をすべきなのか)」ということが改めて問われます。

(もう一度話を元に戻すと)その時、「すごい」「面白い」「難しい」「いやだ」「気持ち悪い」といった表現を超え、極めて具体的・物理的に3DCADや3Dプリンターには何ができるのか、またできないのかを勘査し、言語化していくことが鍵になるはずです。

ものづくりとその体験を精緻なことばに置き替えていくこと

「ものづくり教育」を掲げるものラボの役割が改めて問われることになりそうです。

宮田


posted by ものラボ at 01:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 宮田 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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