2015年12月31日

終わりと始まり

こんにちは。宮田です。
ご報告遅くなりましたが、先日12月5日に「ものラボワークショップ in 高山」の第五回・最終回講座が無事終了しました。

このワークショップにおいて、「最終回」というのは、それまでの4回の講座とは少し異なった位置づけにあります。
それは一言で言えば、文字通り「終わり」ということにあります。
どれだけ壮大な構想を頭の中に抱いていたとしても、時間がきたら終わりです。
自分の中では終わっていないといくら主張しても、かなしいかな、終わりは終わりです。

そして私たちは毎年、「どういった終わり方がいいのか」ということに頭を悩ませます。
これといった結論が出るわけではないのですが、2つの「終わり方」を設定することにしています。

一つは「装置を見せること」です。
これは装置自体の終わりに関わるもので、装置を見せるからには、ひとまずは「ピタゴラ装置をスタートからゴールまでつなげて、"通せる"状態に持っていくこと」が目標になります。

もう一つは「装置を説明すること」です。
これは装置自体の終わりというよりは、このワークショップ全体の終わりに関わるものです。
ただ装置を作るだけでなく、何をどう作ったのか、どこを工夫したのか、どこが難しかったのか、といったものづくりの活動内容を「自分以外の人に言葉で説明すること」が課題です。

特に後者の「装置を説明すること」は、ものラボの大きな特徴だと思います。
確かにものを作るという観点からは、装置がきちんと完成すればよいのではありますが、やはり、作りっぱなしで終わらせたくない。
何よりも協同でものづくりを進める上では、きちんと言葉で説明するということはとても大事です。
子どもたちには、きちんと時間をとってワークシートを記入し、発表練習もしてもらった上で、保護者を含めた見学者に対して装置の説明してもらうことにしています。

ものづくりを言葉で説明することは、ワークショップ内にとどまるものではありません。
こんなものづくりをしたんだよ、こんなところが難しかった、ここが面白いんだよね、といった話を楽しく友達や家族に伝えることは、次のものづくりにつながる大事な活動です。
場所や世代を超えて、ものづくりの輪を広げること、ものづくりのレールをつなげること。
今年のワークショップとその後の日常生活で、それが少しでも達成されれば嬉しい限りです。


TakayamaWS-2015-1.jpg
↑全体での記念撮影



実は、私を含めブログを書いているスタッフのうち3名は、今年で高山でのメインスタッフとしての活動が最後でした。
子どもたちのものづくりに真剣に取り組む姿や熱心に関わってくださる保護者の様子から、いいプログラムにしたいと毎年、毎講座、決意を新たにしてきました。このように私たちに期待してくださり、積極的に参加してくださる方々がいるからこそ、ワークショップを継続的に開催することができました。
そして、和井田製作所の方々には、本当にお世話になりました。このような素晴らしいものづくりの機会と場所を提供してくださったことは、感謝してもしきれません。
メンターの方々には、ワークショップのあらゆる面で助けていただきました。どのような状況でも余裕を持って構える姿と、豊かで含蓄のある言葉から、私たちは多くのことを学ぶことができました。
また高校生スタッフ・先生方の多大なサポートなしには、プログラムの成功はなかったでしょう。本当に頼もしく感じました。
そして、岐阜県高山市、教育委員委員会のご協力は、ワークショップの実務的な運営・周知に欠かせない重要なものでした。

ものラボワークショップに関わってくださった皆様にスタッフ一同、感謝しております。
本当にありがとうございました。

私たちはきっとこれからも何かしら「ものづくり」に携わっていきます。
ここで一つの「終わり」を迎えますが、それは同時に「始まり」でもあります。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。

それでは、皆様よいお年を。


2015年の終わりに
宮田

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2015年12月01日

「うまい」ってなんだろう?

飛騨高山は酒がうまい。

高山でのワークショップが終わった後、帰りのバスが来るまでの少しの間、ふらっと酒蔵をのぞいて、いろんな日本酒を飲み比べたりお土産を選んだりするのが、実はひそかな楽しみです。

スタッフの間では、なんといっても銘酒「氷室」が不動の人気を誇っているのですが、他にも無視ならぬ無飲できない魅力的なお酒がひしめいているのも事実です。第3回講座の後なんかは(私はいなかったのですが…)、「山車の辛口がいい」との見解が一致をみたらしく、スタッフ何名かにより栄えある高山土産に選ばれたとのこと。

そんな話を聞いた後には、じゃあ自分も氷室以外に何か別のを買ってみようかという気持ちになってしまうから不思議なものです。悔しいことに図らずも冒険心と購買意欲が刺激されてしまったようです。
そして、今回たまたま私の目にとまったのは「白真弓」という名前のお酒でした。ちょっと奮発して、純米大吟醸を選びました。

さっそく家に帰って飲んでみるとこれがなかなかの正解で、うまいッ、と思わず一人で唸ってしまいました。

とその後、「うまい」ってなんだろう、とじくじくと考えはじめてしまったのですが、何とも言葉にできません。
私自身はお酒に詳しくありませんし、これまでいろんな種類を飲んできたわけではありませんが、やっぱり「うまいの」と「そうでもないの」があります(ここで、一般に「うまい」ものと自分が「うまい」と感じるものは分けて考えないといけませんが、とりあえず大雑把に話します)。日本酒を飲んだ時、人は、あるいは自分は何を感じとって、そう判断するのでしょうか。

ぴりっとしたとか、フルーティとか、芳醇な香りとか、日本酒の特徴を形容する言葉はたくさんありますし、酸度や日本酒度などそれなりに数値化できる指標と、それに対応した辛口・甘口、濃醇・淡麗といった分類基準もあります。また周りの人が日本酒を飲んだ後にどんな言葉を発していたかを振り返ると、例えば、後に残る・残らない、鼻にふわっとくる、すっきりした、味がしっかりしてる、などなど、いろんな評価の言葉が浮かびます。

でも、そういった言葉で「うまく」言い表したからと言って、「うまい」の全容を捉えきれるわけではありません。そういった言葉ではめ込もうとするそばから、「うまい」はするすると逃げていってしまいます。

さて、そんなことを考えているうちに思い出したのが、前に読んだ『純米酒を極める』(2011年、光文社)という本です。その中で、著者の上原浩さんが、お酒は「官能で味わう」というような表現を使っていたのが印象に残っています。アルコール度数やアミノ酸量など含有物の正確な測定について言えば、人間の舌より、機械的なセンサーの方が長けているともいえます。でも、お酒を舌の上に転がした時に感じ取れるものは、機械的に取得できる情報にとどまりません。

数多くの酒蔵の醸造指導にあたり、品評会の審査員としても活躍し、日本酒をいわば分析的に知り尽くした人が、それでもやっぱり官能で味わわなければならない、という言葉で語ろうとしたことは、外面的に測定できる範囲を越えていて現段階では言葉で言い表すことができないけれど、しかし確かにそこにあるはずの豊かな世界に対する、センス=謙虚さのことなのかもしれません。誰よりも日本酒を知悉した「舌」を武器に、各方面を平然とこき下ろす上原さんの文章テイストはもはや「毒舌」といってよく、一見して謙虚さからは程遠いのですが・・・これも、お酒のうまさに対する際立って誠実な態度の裏返しなのかもしれません。

ようやく、思いがけず、そして半分無理やりセンサーに話が結び付けられそうなところで、高山ワークショップ第4回講座「センサーってなんだろう?」の話をしようと思ったのですが、今日はここまでにします。

とりあえず作った回路の写真だけ載せておきますね。。
IMG_1556.jpg

今回の講座の根っこにある問題関心についてそれなりに話したいこともあるのですが、それはまたいずれということにします。
まずは皆さんもぜひ考えてみてください。

「うまい」ってなんだろう?
センサーってなんだろう?


宮田
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2015年11月18日

高山ワークショップ2015第3回

ものラボスタッフの矢田です。
今年も10月から始まっている高山ワークショップに関わるのも、これで2年目になります。
去る11月7日、2015年度高山ワークショップの第3回が開催されました。
今回は昨年度と異なり、第3回目からピタゴラ装置の製作を始めるプログラムになりました。
昨年よりも密度を濃くして提供していく形になります。

さて、例年ピタゴラ装置製作を始めるにあたっては、そもそもピタゴラとはどんなものかを簡単にスライド+動画で紹介しています。
本家ピタゴラスイッチの動画をお手本としつつ、ピタゴラを動かす原理となっている「エネルギー」を学びます。
本家ピタゴラスイッチにはかなり高度なテクニックも使われてはいるのですが、これから子供たちといっしょに作っていくにあたって着目するのは位置・運動・磁性・弾性の4種類のエネルギーです。

とくに基本となるのは「位置・運動エネルギー」で、この2種は不可分の関係にあります。
要は上から下へと落としていく、という動きです。
高いところから落とすほど強い運動エネルギーに変換され、球が速く運動する。
ピタゴラらしく程よいテンポで動かすためにはどんな傾斜がよいのか、あるいは次の仕掛けを動かすためにはどれくらいの速さでどんな質量の球がぶつかればよいかといったことが関わってきます。
しかしこれだけでは「ピタゴラ装置」にするにあたって単調なものになってしまうので、使い勝手のよい2つの工夫を導入します。
それが磁性・弾性エネルギー、すなわち磁石とバネ(ゴム)の持っているエネルギーです。
磁石で金属球を加速したり、金属片を持ち上げたりすること、あるいは伸ばしたゴムを重りで支えておき、何かの衝撃で重りを解放することなどの工夫が可能になります。
これによってひとひねり効いたピタゴラ装置になっていきます。
では磁石はつなげればつなげるほど磁力を増すのか、ゴムやバネは伸ばせば伸ばすほど弾性力を増すのか。
そうして蓄えた力は次の仕掛けを動かすに足るエネルギーなのかどうか。
そうしたことを今日、子供たちは肌身で手を動かしながら学んだことと思います。

こうした物理感覚は今、すごく養いにくくなってしまっています。
騒音や破損事故を恐れて遊びにくくなった公園、子供たちだけで外出させにくい治安などが前々から言われてきたことですが、近年はこれに「スマートフォンの普及」というものが加わり、劇的に子供を自然界から引き離している状況です。
極端な例を挙げますが、タブレットを触って遊んでいるアメリカの幼児が、ある日初めて紙の雑誌を手渡されたときに一生懸命「ピンチ(2本指を開く・閉じる)」していたのだそうです。
雑誌の写真がズームすることを期待したのでしょう。
もちろんこの子に継続的に紙の雑誌や本を与えていけば自然とタブレットと紙の違いは分かっていくでしょうが、あまり笑えない話です。
木はどれくらい硬いのか、この傾斜では球はどんな速度になるのか、セロテープは固定にどれくらい役に立ち、いつダメになってしまうのか。
そんな感覚を実際に経験する機会は実はいま日本の家庭で減ってきてしまっているのではないかということを危惧します。
この野性味じみた感覚ばっかりは、中学高校で物理や化学を机上にて習ったところで身につくことはありません。

彼ら子供たちは、映像や見本(事前にスタッフで作成)で見たピタゴラ装置を自分の手で作ってみると、全然その完成度には届かないことを知ったでしょう。
今日、子供たちは、僕たちが「微調整」と呼ぶその泥臭い作業を通じて柔軟に製作物を対応させていきました。
この過程は、きっといつか学校で習うであろう物理で無視されてしまう様々な力(摩擦とか空気抵抗とか湿度とかいったもの)の存在を当たり前に想起できるようになるために決して欠かせない経験だと僕は思っています。
そして学校で習った自然界の性質と、目の前の現象とがいつか机の上を飛び越えてリンクする日が来るでしょう。
今まだ習わない自然界の性質があることにも気づくことがあるでしょう。
ピタゴラ製作を「ミクロ」に見ていくと、そんな意義があります。

そして絶対に欠かせないもう一つの意義、ピタゴラ製作の「マクロ」な側面として、「協働」があります。
今年のワークショップ第3回では、ピタゴラ製作を始めるにあたって、6名一班の中でさらに「2人一組」になってもらいました。
その1組ごとに「ミニ装置」を作っていくのです。
今の時代は本当に便利になり、たった一人でもものづくりがしやすくなりました。
設計・デザイン・発注の全工程を簡単にする無料のツールなどいくらでもあります。
しかし、そんな時代においてたった一人ですごいものを作っている人はごく少数で、そしてたった一人ですごいものが作れる人でさえも、あえて一人ではものを作っていないことが多いです。
なぜならそれは、チームワークやコラボレーションによって「もっと良い」ものづくりが出来るからです。
クリエイティビティ、イノベーションの代名詞になりつつある「スティーブ・ジョブズ」は唯一のリーダーとして半ば強引にAppleを牽引していったかのように思われていますが、実際は彼のアイディアを形にする段階で、彼の配下にいた類い稀なる個性からなるチームの協働があってこそでした。
チームメンバーのそれぞれの才能と個性を活かしながらさらなる高みを目指すのが「ものづくり」の基本形と言って良いでしょう。
私たちはこの、誤解された個人主義の蔓延する今日の社会では見失われさえしてしまう「事実」を、たとえなんとなく、明示的にではなくとも分かってもらえたらと思いました。

そこで今日、第2回までの班を一新し、新しい班でものづくりを再スタートすることとなりました。
初めて話す人とも協働でものづくりをする、良い経験になったと思います。
もちろんこれがうまくいかず、製作が滞る可能性も心配していましたが、杞憂でした。
彼らは僕が「はい、製作スタートです!」と言った途端にペアで材料カゴのところまで駆けていき、ペアで協力してミニ装置の製作を始めたのです。
あーでもないこーでもないと二人で試行錯誤しながら、手を替え品を替えアイディアを形にしていっている様子は小気味よくさえありました。

さて、次回は各班で作ったミニ装置をつなげて、一つの大きな装置にしていきます。
二人1組のペアを超え、6人一班を意識することになるでしょう。
いまできている別々の装置のスタートとゴールをつなげるとき、お互いのアイディアの共有が必要になるからです。
ここでの協働をサポートし、促していくのが次なるスタッフの使命です。
そして第4回では、班員の個性や得意分野を理解しつつ協力してものづくりをしてもらうもう一つの仕掛けとして、「センサー」の組み込みが待っています。
マイコンを使った電子工作をピタゴラに組み込む実習です。
例年この実習は全員に体験してもらうのですが、こうした分野に高い関心を示す子と、そうでもない子がいます(ここは好き好きです)。
ちょうどセンサーっ子は班に1人二人くらいなので、その子にはセンサーを中心に考えてもらうことで、小さな分業が生まれます。
第3回で体験したのとはまた一味違った仕掛けが「乱入」することで、班員全員の想像力をかきたてる良い刺激になることが期待されます。

今年の子供たちも想像力豊かで、手がよく動いていて素晴らしかったです。
彼らのポテンシャルが一つの製作物として結実するのが楽しみでなりません。
引き続き、今年の高山ワークショップの動向をフォローしてくださいますよう、よろしくお願いします。
posted by ものラボ at 21:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 矢田 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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